慢性疲労症候群は脳髄液が増えている!?


脳脊髄液減少症の患者会は当初、阪大の慢性疲労症候群の原因がヒトヘルペスウイルスだという説(注:阪大は原因とまでは言ってない)は世界的に否定されており、慢性疲労症候群は脳髄液減少症かのように主張していた時期がある。そして、脳脊髄液減少症を提唱した篠永正道医師は、慢性疲労症候群患者の7割が脳脊髄液減少症である(参照:脳脊髄液減少症液圧症候群とは )と診断されたと述べていた。
しかし、私の知る限りであるが、慢性疲労症候群の専門医で慢性疲労症候群の脳髄液が漏れていると主張している人はいない。米国医学研究所(IOM)が、2015年に数千の論文が調べられ、Beyond Beyond Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndromeという報告書が発表され、慢性疲労症候群という疾病が存在すると言明するとともに、診断基準や新しい病名の提案がなされたが、慢性疲労症候群の髄液の蛋白などの異常は報告されたものの、髄液自体が漏れているというものは一切なかった。
これも私が知る限りではあるが、英語圏の患者で併存疾患として脳脊髄液減少症が合併しているとする人を一人も見かけたことがない。慢性疲労症候群患者が次々と脳脊髄液減少症の診断を受けている減少は日本でのみの減少であって、他国ではみられていない。

脳髄液減少症は、脳髄液漏出症(CSF Leak)という疾病概念の診断基準を緩め、広義にされていったはずであるから、脳髄液減少症のなかにCSF Leakが含有されているはずだが、このCSF Leakという疾病について調べれば調べるほど、日本の脳脊髄液減少症・慢性疲労症候群との相違が浮かび上がってくる。
まず、症状についてであるが、CSF Leakの症状に慢性疲労症候群の主訴である疲労さえない(参照: CSF Leak Association – About CSF Leak – Symptoms)。倦怠感は多少あるのかもしれないが、慢性疲労症候群に特異な労作後の激しい倦怠感のようなものではない。微熱やリンパの腫れなどもない。痛みの範囲も肩甲骨間の痛みが症状として上げられているが、線維筋痛症のような広範囲な痛みではない。これらのことを考えると、CSF Leakであっても、慢性疲労症候群や線維筋痛症の症状が現れることは考えにくい。

日本では脳髄液減少症の原因については、概ね外傷によるものであるとされているが、CSF Leakに関しては、ほとんどIdiopathetic(突発性)で、つまり原因が不明であるとされている。一つの理論として、膠原病が下地にあるのではとされており、特にマルファン症候群/エーラス・ランドス症候群/大動脈瘤/常染色体優性多発性嚢胞腎の3つの疾病がCSF Leakと関連性があるとされている。脳脊髄液減少症患者会でも低髄液圧症候群の権威としてるSchievink 医師(参照: 脳髄液 減少症患者・患者支援会 – 脳脊髄液減少症とは?
)が、2001年から580人の患者を治療したが、外傷性のCSF Leakについては数人しか治療していないと答えている。(参照: CSF Leak Association – About CSF Leaks – Questions and Answers ) 髄液が漏れていると診断したのであれば、なぜ原因を外傷性にほぼ限定し、突発性のCSF Leakである可能性を考えず、これらの病気に対するアプローチが日本ではないのだろうか?

髄液は生成されているので健常者でも漏れている。そのことから考えると、髄液が過剰に生成されていると、漏れる量も多くなることになる。つまり、旧来の脳髄液圧が低下して症状がでているのではなく、逆に脳髄液圧が高いことにより髄液が漏れていると診断された可能性もある。前の記事でも取り上げたが、むしろ慢性疲労症候群では脳髄液圧が高いこと多く、穿刺で髄液がでることで症状が軽くなることすら報告されている(参照: PubMed –
Lumbar puncture, chronic fatigue syndrome and idiopathic intracranial hypertension: a cross-sectional study)穿刺での検査の際、脳髄液圧を調べるのが通常であり、脳脊髄液減少症の診断時に脳髄液圧を調べないのはなぜなのか?穿刺のミスによる髄液の漏れの可能性もあると警告している医師もいる。日本では、疫学の調査が行われていないため患者数は不明(参照: 中日メディカルサイト – 脳脊髄液減少症 原因は硬膜損傷 心の病と誤診も)であるそうだ。なぜこれだけポピュラーになった疾病の疫学がおこなわれないのだろうか?それは、脳脊髄液減少症に批判的な医師が主張していたように、脳脊髄液減少症の現診断基準によると健常者でさえ半数程度が脳髄液減少症と診断されしまうから、疫学調査ができないのではないだろうかと勘ぐりたくなる。CSF Leakは数万人に一人の疾患であるとされているが、日本ではすでに数万人が診断されている(参照: 認定NPO法人 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の方にインタビュー)という。

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6 Responses to 慢性疲労症候群は脳髄液が増えている!?

  1. DiseaseBuster のコメント:

    疲労感を主体として星の数ほど症状のある疾患の情報について纏められているページはあまりありませんのでありがたく読ませてもらっています

    まず私自信は、無理な疲労後からの突然の継続的な疲労感(主症状)、思考困難(主症状)、眩暈、頭痛(稀)、不整脈、POTS(診断済み)、定期的に起きる微熱と関節痛と筋肉痛、及び日内変動のある脱力による息苦しさ(夏場に悪化でほぼ毎日)が7年以上続いており(状態が酷く生活になっていません)、CFSの方も疑って病院を探している最中です
    まず他疾患を除外できる根拠の基本情報として
    ・血液検査(基本項目、血糖、血液像、AChR、ACTH)に異常未発見(いずれも複数回)
    ・心電図、脳波、MRI(頭部、胴部)、CT(頭部)に異常未発見(いずれも複数回)
    恐らく同じような状態の方なら漢方治療だとかどれ程の数の治療や検査を試みたかは察しが付くと思いますので他は割合します

    その過程でですが、CSFが発覚しております
    発覚の詳細はCSFの方でPOTSや疲労感を併発する方が多いと聞き腰椎穿刺RI検査を受けた事です
    私の場合は圧は30mh2o以下と非常に低いですが、驚くべき事に頭痛が殆どなく、漏れもありません(なので減少症ではなく特発のSIHと言われています)
    まず、こちらは主治医からの言葉になりますが
    低髄液圧症候群と脳脊髄液減少症は別の物として扱うべきなのではないかとの話が出ているようです
    前者はSIH、後者はCSFと呼ばれているようですが(これは私にもよく分かりません)、どちらも頭痛(特に起立性)は必須の症状であるはずであり、CFSのような疲労を主体とした症状は普通ならこれほどは出ないのでおかしいとも主治医から言われております
    そのような経緯で、現在はCFSや自己免疫疾患の方面での検査を行ったり病院を探している中で、この記事を見つけ気になった次第です。
    事故などで起きる減少症についてはそれなりの人数がいると予測されているようですが、SIHの中では特発性と呼ばれる漏れが無く圧力低下の原因が不明のものがあり、それに限れば非常に稀な物だと聞いています

    記事中では髄液圧の低下との関係性を否定されていますが、参考までに私のような症例もあると言う事をお伝えします(両疾患ともに未解明ですから真相は分かりませんが)

    本当はメールフォームがあればそちらでお伝えできればよかったのですが、
    私の症例は極めて稀でありこのコメント自体が個人情報の塊みたいなものですので、目を通して貰ったら適当に返信するなりして消して貰って結構です(消して貰った方が助かります)

    • vincent のコメント:

      DiseaseBuster様

      コメントありがとうございます。

      最初に断っておきますが、私は医学を学んだこともなければ、神でもないので、無謬ではないことをあらかじめお伝えしておきます。

      この記事の最初の方に、慢性疲労症候群専門医で脳髄液が漏れていると主張している人走らないと書いていますが、最近になって、慢性疲労症候群と脳髄液漏出症についての記事を初めてみることになりました。
      それゆえ、私の以前の認識からは修正をいくらかしないといけないことになります。
      リンクを貼り付けておきます。英語ですが、機械翻訳にかけてみてくださ。
      https://www.healthrising.org/blog/2017/12/01/looking-glass-cerebral-spinal-fluid-leaks-ehlers-danlos-syndrome-alternate-reality-mecfs/

      ただ、気になる点があり、ME/CFSだと思っていたが、脳髄液漏出症だとわかったという記事なのですが、稀な疾患であるエーラス・ダンロス症候群の合併症状として漏出が起こっているような感じですし、エーラス・ダンロス症候群患者界から、この疾患では運動よいと批判されているとか。
      POTSの症状については、漏出症の場合、心拍の上昇が激しくない等があるようです。
      突発性の漏出についての確認は、科学というよりアートのようである等の記述もあります。

      スタンフォード大学の慢性疲労症候群の専門医であるモントーヤ医師もイギリスでの講演で、患者がエーラス・ダンロス症候群であり、漏出があったことを言及したようです。

      私自身もこれから、少し調べないといけないと思っています。

  2. DiseaseBuster のコメント:

    ご丁寧な返信ありがとうございます
    エーラス・ダンロス症候群との病名は始めて目にしましたが、主治医から聞いた話ではCSFやSIHは確かに細身だったり虚弱である体質の方が非常に多いようです(事故や怪我の後で漏れる例ではそうでもないようですが)
    私自身もその疾患の症状として書かれているほど酷くはありませんが関節や体つきが稀なくらい貧弱ですので、気になる疾患として記憶しておこうと思います

    CSF及びSIHの患者の治療の一環として症状があってもある程度の運動を要求する事が発症し時間が経ち慢性化した例では非常に多いようですが、私個人としてはCFSと同じく過度に疲労を煽ると悪化すると感じます

    私はPOTS及びCSFとSIHを専門に文献の掲載等も行っている程その道に強い主治医に診察して頂いていますが、CFSのような疾患である可能性は無いのか尋ねましたところその先生の見解では顔を歪めSIHが明らかな以上関係を否定したそうな感じでした
    ただし、CSFやSIHではこれ程までに疲労感や自律神経症状が現れる事は少なく社会復帰が困難な疾患ではないと伝えられました
    恐らく国内の神経内科医の間ではCSF及びSIHとCFSの関係性は否定傾向があるのかもしれませんし、実際にCFSと非常に似た症状を訴える例は本当にごく一部のようです
    CSF及びSIHの患者ではかなりの頻度でPOTS(私の場合は血圧はそれ程落ちませんが)の症状を持つ患者が多いと聞きましたので、このような一部の類似点がより研究の状況を錯綜とさせているのかもしれません

    • vincent のコメント:

      Disease Busterさん

      コメントありがとうございます。
      私はどうしても情報量の多い英語から判断してしまう傾向があるのですが、
      次のリンクではSIHはCSF Leakの副次的なものだとあります。
      SIHという概念自体、あまり使われなくなっているような感じです。
      https://rarediseases.org/rare-diseases/spontaneous-intracranial-hypotension/
      ということは、漏れがないのにSIHと診断するのはどうかなとか思います。
      ただ、突発性の場合、漏れが確認しにくいということもあるようです。
      エーラス・ダンロス症候群等の病気から漏れが起こっているのは自己免疫疾患により、
      硬膜に穴が開くということだとおもうので、
      Disease Busterさんのケースとは異なっているのでは?と思ったりします。
      漏れてなくて、圧が低いということはあるのでしょうかね。
      髄液の生成が少ないとか。
      それだとブラッドパッチという治療法は効かないですよね。

      Disease Busterさんの症状を聞くと、どちらかというとCFSのように感じます。
      POTSの症状があるとのことですが、起立した時の脈拍の向上は激しいですか?
      頭痛がないというのも?という感じです。

      脳髄液圧が低かったとのことですが、日によって圧が異なっているとか、
      診断の正確性があるのかなとかも思いますね。

      CSFLeakもCFSも医師の中では存在を疑っているので、
      片方だけを信じているということもあるはずです。

      • DiseaseBuster のコメント:

        SIHとCSFですが、このあたりの考え方は医師によって異なるのではないかと思います
        私が診ていただいている先生の見解では漏れが無く生産量が低下する病態も存在するのではとのことです
        当然そのような例ではBPの効果が疑問視されていますが、BPには漏れを塞ぐ以外の効果もあるのではとの説が出てきているようです
        もう1つの説では機器の精度の問題で漏れがあるものの検出できないのではとの意見を見かけますが、先生からはこの事について何か聞いたことはありません

        最近分かっている事で、動物実験レベルでは交感神経を興奮させた個体で髄液の生産が落ちる事が明らかになっていると教えていただきました(つまり生産は副交感神経支配である事が明らかになりつつあるようです)
        また漏れがある例に関してはある物質が関係するかもしれないとの説が研究中のようで特定の患者限定で検査が行われているようです(恐らくこの検査に関してはネット上での情報は皆無だと思われます)

        私に関しては髄液の状態がどうであれ圧が相当な低圧を示しているにも拘らず頭痛が無い事(ただし頭部に違和感はあります)、CSF及びSIHであまり無い主症状であることもあり、CFSとよく似た症状を呈すると言われている別疾患の抗体の検査が検討されています
        このような限定的な検査は受けられる場所が限られており、非常に少人数であることから個人情報の問題でコメント欄では詳細を伏せさせていただきます(CFSと直接の関係は無いかもしれませんが、詳細にご興味がありましたらメールでならお答えします)
        POTSの症状ですが、私の場合は血圧の降下ではなく脈拍が上昇します(体調が優れない日であればおおよそ安静時の2倍近く)

        CFS、SIH及びCSFのように病態や異常を機器類で観測する事が困難な疾患では共通の事ですが、多くの説があり医師によって支持している説が異なっているとは感じますね

        • vincent のコメント:

          DiseaseBusterさん、こんにちは!

          私は脳髄液の漏れの症状が全くないので、
          ご紹介いただかなくてもいいですよ。

          例えば、このページであげられている症状が一つもないのです・・・・
          https://www.cedars-sinai.edu/Patients/Health-Conditions/Cerebrospinal-Fluid-CSF-Leak.aspx

          POTSの症状は昔ありましたが、その時は起立時に心拍数が向上していましたし、
          認知機能の低下もひどく、CSFほど軽くはないようです。
          CFSより稀な病気ですし、突発性の原因となるような遺伝性の膠原病も患っていないので、
          髄液が減少していたり、圧が低下していることはないと思っています。

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