慢性疲労症候群(ME/CFS/SEID)と脳髄液減少症


先日、脳髄液減少症の治療ブラッドパッチが保険適用になったというニュースがあり、患者らは沸き立っているよう。9割が効果があるというが、私が直接耳にする話では、それほどブラッドパッチで改善したというのは多くはなく、首をかしげてしまう。私自身は脳髄液減少症の存在については肯定も否定もしないが、この記事では脳髄液減少症が存在すると仮定する。

慢性疲労症候群患者がネット上で自身の病名に慢性疲労症候群と脳髄液減少症を併記しているのをみることがある。私に限ってであるが、英語圏ではそのような併記はみたことは一度もなく、日本独特の現象であるといえる。

慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準(平成25年3月改訂)によると大クライテリアに「慢性疲労をきたす疾患・病態を除外する、または、経過観察する。あるいは、併存疾患として認める。」とあり、さらに「ア)CFSを除外すべき主な器質的疾患・病態を別表1-2に示す」と記されている。

別表 1-2には脳髄液減少症が含まれていないものの、慢性疲労症候群の研究者は、慢性疲労症候群は脳髄液減少症と併存疾患として扱わないとしている。脳髄液減少症と診断されたのであれば、諸症状は脳髄液が減少しているから起こっているのだから、原因が不明の慢性疲労症候群ではないので当然と言える。それどころか、慢性疲労症候群ではむしろ髄液圧は向上しているという研究 ‘JRSM Short Rep. 2013 Nov 21;4(12):Lumbar puncture, chronic fatigue syndrome and idiopathic intracranial hypertension: a cross-sectional study.‘さえあるのだ。

脳脊髄液減少症患者・家族支援協会のページ「脳脊髄液減少症とは?」に、当疾患の権威としてSchievink博士の前が挙げられている。その医師による論文がJAMAに、”Spontaneous Spinal Cerebrospinal Fluid Leaks and Intracranial Hypotension” と題して掲載されており、その中に1994年に行われた調査では、5万人に1人と推定されるとある。一般人口からすれば0.002%。日本でも同様の割合で発症するとすればせいぜい2,500人を超える程度であり、慢性疲労症候群の0.3%、38万人に比べれば非常に少ない患者数ということになる。もし、仮に慢性疲労症候群と診断された患者の中に脳髄液減少症の患者が含まれているとすれば、0.6%のみが脳髄液減少症であるということなり、ごく少数であることに変わりはない。

それなのに、なぜこれほどまでに脳髄液減少症と診断される患者が多いのか?
以下の2つの可能性しかないと思う。

  • 診断方法に問題があり脳髄液減少症ではないのに診断を受けている。
  • 日本人は罹患しやすい体質か環境等により患者数が多い。

前者の方は、脳髄液減少症そのものを否定している吉本智信医師が以下の様な診断の問題点を上げている。

すなわち,RIシンチグラムの画像所見で髄液漏れが見られたとしても,
①穿刺の失敗で硬膜外腔に漏れた可能性がある,
②漏れが明白でない早期膀胱内集積像の場合は腰椎穿刺の針穴から漏れたことが原因である,
③ヒトにおいても脊髄からの髄液吸収があるから髄液漏れと確定診断できない,
としてRIシンチグラムでの画像所見を脳脊髄液減少症の診断基準とすることを批判する
引用元  小松亀一法律事務所 ‘脳脊髄液減少症篠永診断基準と吉本批判紹介

吉本医師によると診断方法に問題があるよう。

後者の方は考えられないのか?疾患によってはベーチェット病のように地域性があるが、それにしても患者団体も権威だとしている医師の考えとはあまりに乖離しており、日本の研究者はなぜ日本にこれだけ他国より患者が多い理由を説明する義務がある。

事故などの衝撃後に発症したのだから、物理的な刺激により脳髄液がもれるようになったのだと言う人もいるかもしれない。しかし、慢性疲労症候群や線維筋痛症はPhysical traumaからも発症するとされている。参照 ‘Harvard Health Guide – Chronic Fatigue Syndrome‘ , ‘Physical Trauma and Infection as Precipitating Factors in Patients with Fibromyalgia.‘。※英語のTrauma(トラウマ)は身体的な衝撃も意味する。

以上のことから、慢性疲労症候群と診断されていながら脳髄液減少症と診断され、両疾患を併記するのは医学的に問題があるだけではなく、病気自体への信頼性の損失・無用な治療に走ってしまう等の慢性疲労症候群患者に混乱をもたらしているのではないか。

※関連記事

カテゴリー: コラム タグ: パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください