日本はアメリカ・イギリスを見習いなさい?


大分前であるが、医療ガバナンス学会に、’Vol. 306 慢性疲労症候群の患者たちが放置されている現状を打開するために‘という記事が掲載された。また、YouTubeにも、’慢性疲労症候群(CFS)の患者たちに光を‘と題された動画の中でも語られている筋痛性能脊椎炎の会(旧ともにかんがえる会)篠原三恵子代表が、「日本政府は慢性疲労症候群の研究がほとんどされていない。そして、アメリカやイギリスは器質的疾患と認めているから日本政府を見習え。」という度々行っている主張は正しいのか?

実は、この主張は真逆であって、アメリカ疾病予防センター(CDC)・イギリス国民保険サービス(NHS)は慢性疲労症候群(ME/CFS)を精神疾患的に捉えて研究されていると患者等からさんざん批判され、そして、日本は疲労研究をプライオリティとし多額の研究費が与えられ、研究実績に対して主にアメリカの患者団体から賛辞がおくられていたのである。

アメリカでは2006 年に、疾病予防管理センター(CDC)が研究者や医師達の研究結果を報告し、CFSは精神的疾患ではなく、深刻な器質的な疾患であると記者会見で宣言しま した。それ以降、認知キャンペーンを推進し、研究を支援しています。また、CDCにおけるCFSの研究責任者であるリーブス医師は、「CFS患者の機能障 害は、多発性硬化症、エイズ、末期の腎不全、慢性閉塞性肺疾患などと同程度なほど深刻です」と述べました。

引用元 医療ガバナンス学会 ‘Vol. 306 慢性疲労症候群の患者たちが放置されている現状を打開するために’

まず述べられているCDCが慢性疲労症候群を深刻な器質的疾患であると記者会見で宣言したとあるが、これは明らかに間違っており、CDCは慢性疲労症候群(ME/CFS)をReal condition(正真正銘)の病気だと述べたに過ぎず、器質的疾患だと宣言したことはない。また、この引用の中のCDCの慢性疲労症候群(ME/CFS)研究責任者 Dr. William Reeves(リーブス医師)は、患者等から慢性疲労症候群を精神疾患的に捉えており、目立った研究成果が出せずにいたため、激しく批判されてきた人物である。

先日のNew York Timesに、このDr. William Reeves死去の記事が掲載された。

Dr. William C. Reeves, an epidemiologist who fought his own federal agency to obtain money to study chronic fatigue syndrome and then infuriated patients with the ailment by suggesting that it was linked to psychological problems rather than a virus, died on Aug. 3 at his home in Atlanta.

引用元 New York Times ‘Dr. William C. Reeves, Who Sought Cause of Fatigue Syndrome, Dies at 69

ウイルスより精神疾患的な問題と関連しているとしたため、患者等を激怒させていたことが記されている。諮問委員会でも同医師が研究の妨げになっていると批判された。

では、イギリスはどうなのか?イギリス政府も同様で、器質的疾患と認めたということはない。

Dr Charles Shepherd of the ME Association condemned the abuse of researchers but said sufferers had a justifiable complaint that almost no government-funded research was looking at the bio-medical aspects of the illness.

引用元 Daily Mail ‘Scientists investigating ME get ‘death threats’ for investigating psychological causes

慢性疲労症候群を精神疾患的に捉えているイギリスの医師に多くの脅迫文が送られているという記事であるが、イギリス患者団体 ME AssociationのDr. Charles Shepherdが、政府の研究費のほとんどが生理学的な面に利用されていない。つまり、精神疾患的な面を重点に研究されているということである。おそらく篠原氏が器質的疾患だと認めたと思ったのは、英国国立医療技術評価機構(NICE)から治療ガイドラインが発布されたということを、イギリス政府が器質的疾患だと認めたと認識したのだろう。
ちなみに、このガイドラインが発布された後、治療法に精神疾患的治療である認知行動療法(CBT)・段階的行動療法(GET)だけが含まれていたことで、イギリスの患者団体から激しく批判され、違憲審査に持ち込まれた。結局取り下げになったが。

Nice, the National Institute for Healthcare and Clinical Excellence, has come under fire too for recognising only psychosocial treatments, in the shape of cognitive behaviour therapy and graded exercise programmes. They were taken to judicial review in 2009 by a group of people who claimed the experts who drew up their guidance were biased or had conflicts of interest.

引用元 The Guardian ‘The trouble with ME

皮肉なことに、今年度の研究費が大幅削減されたことで、篠原氏が主張していた、日本は慢性疲労症候群の研究をしていないということが現実になってしまった。

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